「星雲賞日本長編部門作品部門賞」を受賞した、有川浩の代表作のシリーズもの。まだ文庫になっていないので、今回は久しぶりの単行本なのだ。しかも電車で読むには結構重い、ハードカバーの長編だ。ライトノベルではないが、ライトなノベルスなので、装丁もライトにして欲しかったのだ。

図書館が、本の収集・閲覧・貸し出しの自由を、武装集団から守るため、自ら武装してしまった世界。その姿勢に共感した熱血娘の笠原郁は、図書館の自衛組織に就くことになった。鬼教官にしごかれながらも、憧れの隊員に会えることを夢見て訓練に励むのだった・・・。

読む前のイメージでは、もっとお気楽なラブコメかと思っていたのだが、路線的にはミリタリー・オタク有川浩お得意の、延長線上にあった。とは言っても、いつもの異生物と戦う話ではない。反社会的な本を抹殺しようとする敵から本を守るべく、マシンガンや武装ヘリまで繰り出す、架空の軍事組織が活躍するお話なのだ。
この有川浩という作家の作品は、過去数年の間でポツリポツリと読む程度だった。我が輩としては、それほど気にしていなかったのだが、最近「阪急電車」を読んでからは、印象が変わったのだ。Wikipediaでチョイと調べてみると、どれどれ「2003年に電撃ゲーム小説大賞を受賞した女性のライトノベル作家」とある。まだ作家デビューしてから7年程しか経っていない若い作家なのだ。デビューがメディアワークスの電撃文庫なので、ラノベ作家というラベルなのだろう。しかし最近では、「SFミリタリー+ラブロマンス」という得意パターンから脱却し、「レインツリーの国」
のような純粋に恋愛ものも書いている。

この「図書館戦争」は、自衛隊三部作の後に書かれた、最も得意パターンである「軍事もの+ラブコメ」小説だ。ただ、意外に「芯」となる考え方は真っ当で、思想信条の自由は武器を持ってでも守るべき、という信念が感じられる小説である。しかし、ラノベ出身だけあって、軽い文体と、お気楽でテンポよい会話で、快調にお話が進む。内包するテーマが重くとも、軽く読めるというギャップ感が特徴の作家だと思う。同じラノベ出身の桜庭一樹とは、真逆の印象となる。出版社が、電撃文庫でなくラノベには不釣り合いなハードカバーで売りたくなるのは、良くわかる気がした。しかしハードカバーにするなら、オッサンには買いづらいラノベ風イラストは、止めてもらいたいもんだがね。

それにしても、図書館の自由に関る宣言を冒頭に掲げ、マシンガンをぶっ放してでも本を守る世界を構築するのは良いのだが、世界中の情報にインデックスを付けようという現代IT社会においては、すでに時代錯誤感が否めない。電子書籍の時代においては、本を物理的に確保することに、どれだけ意味があるのかが、次第につかめなくなってくるのは確かだろう。ま~所詮エンターテイメントだから、という解釈が大半だろうな。しかしあと数年経ったら、本を死守するという行為が、パロディにすらならなくなりそうで怖い。図書館という存在が、人類英知の賜物だという認識が、理解さえできなくなる日も近いのかもしれない。などと娯楽小説を読みながら感じてしまったのでした。