100万部以上売れた話題のベストセラーである。今年映画にもなる戦国武将ものなのである。2009年の本屋大賞で2位になったエンターテイメント小説なのだ。
時は戦国時代。天下統一のため進軍する秀吉に、唯一逆らう城があった。それが周囲を湖に囲まれた「忍城」であった。城主・成田長親は、領民たちからは「のぼう様」と呼ばれ、バカにされながらも親しまれていた。
なかなか面白かった。個性的な戦国武将達の戦のお話なのだが、石田三成が率いる2万人の大軍を前にして、千人もいない小さな城をどうやって守るのかが、興味の中心となる。
しかし、う~ん、なんだろな。歴史小説として、題材は非常に面白いのだが、意外に短く、上下巻合わせても450頁しかない。わざわざ文冊にする理由はないのだが、小学館というマイナーな文庫なので、しかたがないか。
とにかく、せっかくの題材を意外にあっさりと書いているので、簡単に読めてしまうのだ。もともと脚本家なので、映画化を前提とした長さなのだろうか。もうチョット人物なり戦いなりを書き込んでくれたら、もっと楽しめたかもしれないのだ。
それにしても、強烈なキャラの武将達を統率する、総大将・成田長親の変人キャラは、今まで読んできた時代劇の中でも、ユニークさで群を抜く。語り手は、言わば最も武将らしい勇壮なXXXなのだが、この長親の心情を最後までいっさい語らず、奇妙な行動を描くだけだ。結果として戦に勝っても、結局のところ戦略的行動だったのか、ハタマタただのバカ殿なのかは分からず、奇妙な後味が残る。個性的と言えば個性的だが、変わった読後感が残るお話だ。
ま~それでも、意外な展開や頭脳的な作戦、手に汗握る白熱した戦闘シーンもあり、なかなかの娯楽大作となっている。前半部分は、歴史小説らしく史実に基づいた注釈が多く読みやすいとは言えないが、後半になるとクライマックスの忍城攻防戦となるので、一気呵成に話が進む。
ようするに、戦国武将ものの傑作とまでは言えないが、エンターテイメントとしては、十分楽しめる小説であった。