直木賞作家・中島京子のデビュー作であり、田山花袋の「蒲団」を本歌取りした長編ユーモア小説である。

教え子である日系女子大生のエミを、学会にかこつけて東京まで追いかけてきたデイブ。日本文学研究者のアメリカ人のデイブは、エミを待ち伏せするうち、画家のイズミと知り合う。エミの曾祖父ウメキチ爺さんを介護するイズミは、ウメキチを何とか絵に描こうと苦心していた。

田山花袋の「蒲団」のパロディ小説ではなく、かなり凝った構成の小説だ。デイブのお話の途中に、「蒲団の打ち直し」というデイブ作の小説が入る。これが田山花袋の私小説と言われる「蒲団」を、妻の視点から書き直した完璧なる「裏バージョン」となっているのだ。これが面白い。さらに、100歳になるウメキチ爺さんの、戦時中の話も挿入され、お話は明治から、大正、昭和、平成の現代に至る、時空を越えたものとなるのだ。

にしても、いつの時代でも、男たちは浮気をしたがる。明治の文豪は若い娘に入れ込み、戦後のそば屋の親父は女を囲い、アメリカ人の教授は女子大生の尻を追いかける。そしてデイブ教授はつぶやくのだ。「女は分からん」と・・。ま~登場する男たちはみな情けなく、女たちはみな勇ましくかっこいいのだ。

文豪の妻も、おバカなエミも、画家のイズミも、デイブの妻も、しがらみを振り切り、最後は自立しようとする。この「FUTON」の主人公は男だが、現代らしく、あくまで女性のための小説なのだ。

大昔に「蒲団」を読んだ読者はもちろん、読んだことがない大半の読者でも、十分に楽しめるお話なのである。