ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞の、ちょっと変わった作品。
映画の助監督である俺は、ロケ地を探しているうちに、大きな関東地図帖を抱えた奇妙な男と出会った。地図帖には、その土地毎に男が紡ぎだした奇妙な物語が、多数書き込まれていた。俺はその物語を求め、地図男と出会うことを願うようになってきたが・・・。

いかにも新人らしい、荒削りだが非常に個性的なお話だ。大半は「地図男」が書いた様々なショートストーリー。天才音楽ベービーの話。東京都23区の紋章を賭けて繰り広げられる秘密のバトル。スーパー悪ガキと舞踏症少女のせつないラブストーリー。

地図男の繰り出すビートの効いた物語は、あの舞城王太郎のノリで軽快に語られるのだ。粗筋だけのもあれば、短編作品もあり、バラエティに富んだストーリーは、予想もできない展開となる。しかしメインストーリーである地図男は、最後まで謎であり、解き明かされることはない。

別に傑作というわけではないし、とんでもない駄作という人もいるはずだ。かなり癖のある小説なので、好みは分かれると思う。しかし舞城王太郎のぶっ飛んだ感覚の話が好きな人なら、きっと好きになるはず。我が輩としても嫌いではない。今まで読んだことのない、新鮮な感性を味わうことができたからだ。以前、舞城王太郎を初めて読んだ時のインパクトほどでないが、それにかなり近いのだ。

ま~いかにも若者が使う、かぎりなくタメ口に近い語りで、テンポ良くおしゃべりする文体は、決して上手くはないが印象的。将来、どこまで化けるか先物買いのマニア読者しか、評価はしないだろう。とにかくユニークな小説を読みたい人には、お勧めできるお話でなのであった。