タイトルが「現代思想」となっているが、「日本辺境論」
で一躍有名になった内田教授の、エッセーのようで人生相談のような、哲学講義なのである。身近で雑多な疑問を、目から鱗の方法で、バッタバッタと切り倒していくのが小気味いい。

まずは、「文化資本」の話。つまり家庭において獲得した趣味や教養やマナーと、学校で習得した知識や技能を対比。親の財力の差が、階層社会を生み出すという身も蓋もない結論だ。また、「負け犬」と言われる三十路、未婚、子無し女性は、現代文化を支えるパトロンだ、という話題。

後半は、若者からの人生相談の形式で、現代思想の講義なのだ。敬語の意味・転職の悩み・学歴の効用・給料の基準・フリーター批判者の落とし穴・結婚の意味・離婚とは、などなど。雑多で素朴な疑問を、期待を裏切る視点から回答するのだ。これが実に面白い。知性とはこのように使うものだ、というお手本のような答え。

しかし敬語とは、「力あるもの」から我が身を守るための知恵だ、という説を初めて聞いた。なるほど。圧倒的に力があるものに、素手で立ち向かうのは、たんなるアホでしかないのは確かだ。

フリーターに対する意見も鋭いが、日本には低賃金でもまじめに働く若者が大勢いるという事実は、世界的にみたらは珍しい、という意見には納得。今回の大震災の際の、日本人の我慢強さや行儀の良さに通じている。確かに、どんな酷い状況下でも暴動や略奪が起きない社会は、世界的にも希有なはず。もっと誇っても良いと思うのだが。

ま~とにかくだ。知的好奇心が高い人には絶対的にお勧めしたい教養本なのであった。