読売新聞の夕刊に連載された話題のサスペンスである。直木賞作家・角田光代の、中央公論文芸賞・受賞作品でもある。もうすぐ映画が公開されるベストセラーだけあり、オビがなんと映画宣伝用のフルカバー。カバー裏には映画の誕生秘話まで載せてあるのだ。これではオビとは呼べないな~。

不倫相手の乳児・恵理菜を誘拐した希和子は、逃亡生活をしながら子育てをする。小豆島に逃げ込み、蕎麦屋の住み込み店員として、やっと落ち着いたと思われたのだが・・・。

前半は、赤ん坊を連れたまま逃げ続ける希和子の、手に汗握るスリリングな逃避行。後半は大人となった恵理菜が、辛い過去を引きずりながらも意外な生き方を選ぶ様を描く。

この小説は、様々な女が登場する。乳児、少女、女性、母親、老婆まで実に女だらけの、女の話。さすが女性が書いただけのことはある。犯罪を実行するのも、手助けするのも、追いつめるのも、救うのも、女なのだ。男はほとんど登場しない。いても、実に情けない。まるで種付けだけのために、男がいるようなのだ。なぜだろうか・・・。
出産、育児、教育だけなら特に男は不要だ。もちろん女性も働けば、収入は確保できる。女性だけで生きていくことは、意志があれば十分に可能なのだ。だからこそ、今の時代にこんなお話が生まれるのだろう。

必要十分な教養も、常識も、才能も、兼ね備え、資産まであるにもかかわらず、生理的な感情に突き動かされてしまう女・希和子。男にはほとんど理解不能な行動だ。女は理不尽な行動をするもんだ、という経験則だけでしか理解はできない。娘、恵理菜の最後の感情的行動も同じ。

角田光代は、女性をすべからず母として描く。子供が、子育てが、すべてに優先するものとして。例えそれが、偽りの母子だとしても・・・。
女性が描く、女性しか理解できん、ノンストップ・サスペンス。やはり女はわからんな~