「夜は短し歩けよ乙女」で、一躍人気作家に躍り出た、アノ森見登美彦の「書簡体小説」である。よ~するに、手紙だけで構成された小説なのだ。これがさすが森見だけあって、実にくだらん。読んでいてアホらしくなること請け合いである。ヒマつぶし以上に役に立たないシロモノなのだが、これがショーモナク面白い。思わず吹き出してしまうので、電車で読むには要注意なのだ。

京都の大学院生・守田一郎は、教授の指示で能登半島にある研究所に飛ばされてしまった。人家のほとんどない寂しい場所で、先輩から厳しい指導を受けることになった森田は、手紙道場を始めた。友人・妹・先輩・小学生の教え子や作家にまで、ひたすら手紙を書きまくり、文通を始める。目的は麗しの女性に出すはずの、恋文技術の上達だった。しかしその成果は・・・。

久しぶりの森見節なのだ。デビュー作から「夜は・・・」まで、森見体と言っても良いほどの、特異な表現力で人気を博した森見だが、最近はさすがに息切れ気味だった。怪談やらエッセー、ファンタジーなどでお茶を濁していたが、やっぱり森見にはラブコメしかない。例えワンパターンと言われても、京都の学生を主人公にしたラブコメじゃないと本領を発揮できないのだ。ま~今回は書簡体というアイデアがキーとなっているので、ワンパターン作家という非難は浴びずに済みそうだ。(って、誰も言ってないか…)

しかし夏目漱石以来の、伝統の書簡体小説といっても意外に読んだ覚えがないな~。いくつか読んだはずなのだが、すぐには思いつかん。短編では確かにあったはずなのだが、書き手が一人しかいない長編小説は珍しいはずだ。

また、文通相手のキャラによって、文体を極端に変えたり、見栄張って自分の人格を変えてみせたりと、なかなか笑わせてくれるのだ。恋文を書こうとして、次第に支離滅裂になっていく様も楽しい。いわば若い男の妄想癖をリアルに描いたと言ってもよいのだがね。ま~女性に、全ての男がいつもこんなスケベなことばかり考えていると誤解されるのもまずいか・・・。(大差ないが…)

とにかく、暇つぶし以上のものを期待せずやたら面白い小説を読みたい人向けに、お勧めしちゃいます。(*^_^*)