「鴨川ホルモー」、「鹿男あをによし」と風変わりな小説ばかり出しているマキメの、これまた一風変わった伝奇小説風エンターテイメントである。またまた映画になるそーだ。最近はチョットでも売れた小説は、すぐにでも映画にするようだな~。邦画業界も企画が安直だ。

会計検査院の調査官・松平は、二人の調査官を率いて、大阪府庁を監査していた。やがて社団法人OJOという怪しい団体に多額の補助金が流れていることを突き止めた。松平がこの団体の存在を追求しようとすると、大阪人の100万人を越える男達が、突然一切の仕事を放棄し、松平と対峙を始めた・・・。

ま~とんでもないホラ話である。いわゆる伝奇小説ほどオドロオドロしいわけではなく、SF的センスでもなく、ギャグが多いので「ホラ話」としか言いようがない、荒唐無稽なお話なのだ。それでも会計検査院という、あまり知られていない特殊な役所の役目や、その内幕を詳細に説明したり、大阪城にまつわるトリビア的知識を披露しているので、単なるおとぎ話でもないのだが。

しかし登場するキャラが、やたら個性的だ。ハンサムで鋭利な松平に、モデルのように長身で美人、チビデブという凸凹役人三人組は、ま~なんとか許せる範囲。しかし鍵を握る中学生が、意地でも女の子になりたい男の子という設定が意味不明。ま~話を膨らませるためなのだろうが、メインのストーリーとは直接無関係だし、ラストにその女装がキーになるわけでもないしな~。

それにしてもマキメの小説には、いつも「異形のもの」が登場する。ごく平凡な生活をしている男の前に、小鬼だったり、鹿男だったりが、出現するのだ。舞台は魔性の都・京都に奈良。異形のものが住んでいても不思議でない魔都だ。しかし今回は異形のものは、いない。「大阪人」しかいない。というか「大阪人」が異形のものなのだ。数百年に渡る歴史を背負い、文化を守り、伝統を受け継ぎ、連綿と連なる豊臣家への想い、大阪への愛着と江戸への対抗心を受け継いできたのが「大阪人」なのだ、とマキメは語る。

この小説は、大阪で生まれ大阪で育った大阪人が、大阪人のために贈るオマージュなのだ。前半のやたら微細な風景描写が、なんだか冗長に感じるのは、我が輩が大阪人ではないからなのだろう。そして最後は、いつものマキメ小説ようにハートウォーミングに終わる。優しく後味良く・・・。