2011新書大賞第2位、50万部売れている話題のベストセラー経済書である。
「経済を動かしているのは、景気の波ではなくて人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」というのがこの本の骨子であり、結論なのだ。
ま~この一言で、内容をほぼ言い切ってしまうのだが、前半で国の統計資料や国勢調査などの公開資料だけで、如何に世の中の経済上の常識「景気さえ良くなれば大丈夫」というのが妄想でしかなく、根拠がないことを数字で示す。後半になるとで前述の自説を実証し、さらにどうすればこの不況を脱することができるか、具体的な提言をしているのだ。
・「好景気下でも内需縮小」が延々と続く
・「生産性向上」努力がGDPのさらなる縮小を招く
・マクロ経済では不可能な「インフレ誘導」と「デフレ退治」
・「日本の生き残りはモノづくりにかかっている」という誤解
・高齢者激増に対処する処方箋
というのが本書の主たる内容だ。とにかく著者の考え方の基本は、統計上の数字をみる際には、率とか割合ではなく、その絶対値を重視しているのだ。
確かにマスコミが垂れ流している経済上の数字は、なぜか成長率、失業率、生産性のように、比率ばかりで絶対額の数字はほとんど出てこない。これは、マスコミの経済記者などが、経済指標を扱う数字を、ほとんど教科書的、反射的に扱っているからでしかない。よーするになにも考えずに、昔からの慣習で数字を眺めているため、経済における絶対額の意味を考えてもいないからだろう。このために、近視眼的・微分的視点でしか経済を見ておらず、かえって人口動態のような、当たり前のマクロな動きを見逃していたのだ。というか、気がついていたとしても、景気と連動しているなどとは思いつきもしないのだ。
なんだか本書で指摘している内容は、当たり前といえば当たり前で、経済にシロートほど納得しやすい。ネット上では、意外にもこの本は、賛否両論のケンケンガクガクの様相を示していた。経済学に詳しい連中ほど、反論しているのが面白い。ま~従来から金科玉条の如く使っていた経済上の常識とやらを、頭ごなしに妄想だと言い切られては、立つ手がないのだろうな。
しかしどう見ても、旧来の手法は行き詰まっており、デフレ対策が効をそうしたとも思えない。ここは本書の指摘や提言に対して、真摯に耳を傾け、議論をすべきなのだろうな。
この「デフレの正体」という経済書は、指摘内容は分かりやすく、刺激的で、確かに傾聴に値する論考だ。しかし新書として見ると、冗長度が高く、もっとコンパクトに読みやすくなったはず。が、ま~現代社会人なら、必読書の経済書ではある。