豊崎由美と言えば、「文学賞メッタ斬り!」という快作?怪作?を出した雑誌で活躍する書評家だ。とにかく歯にきぬきせず言い切ってしまう度胸を持ったライターというイメージがある。文学賞の中では最も権威がある芥川賞や直木賞を、時代が読めていない時代錯誤の賞だとか、選考委員が年寄りばかりだからダメだとか、言いたいことを言っていた。それに比べれば、この「ニッポンの書評」は非常に真っ当に、日本の書評を巡る状況をまとめているのだ。

我が輩も今まで、様々な小説や新書を読み込んできたが、新聞や雑誌に載る書評欄をかなり手がかりにしてきたのも確か。事実この「ニッポンの書評」自体も、朝日新聞の書評欄に採りあげていたから発見できたのだ。もし書評欄になかったら膨大な新書に埋もれて気がつかなかっただろうな。本屋を3店巡ってやっと発見できたぐらいマイナーだったし。とにかく「書評」というキーワードで、まとまった本ができたこと自体が喜ばしい。我が輩が、今ここで書いている駄文は、書評などと言うレベルではなく、感想文にしかすぎないのだが。概要を紹介すると・・・

書評家は、読者に良書を紹介するガイドブックの役割。ま~当然なのだが、最初は書評と批評との違いを語り、平均して800字程度の狭い枠の中では、手際よく本の内容を説明し、読者の本の購買意欲をそそる事が重要だと語る。したがって粗筋のまとめ方は重要で、極端な話粗筋が巧ければそれだけでも立派な書評として成り立つとまで言う。もちろん、「批評」と異なりネタばらしをせずにだ。

さらに、実際に書かれた自分の書評や他人が書いた書評を遡上にあげ、比較する。また何と、各有名新聞の書評のランキングまで付けてしまうのだから凄い。ここらは、豊崎由美らしいというか、豊崎由美でないとできない快挙だ。ま~さらにWebで素人が書いた酷い書評を酷評するのだが、ここまでやるとやりすぎの感がある。書きたくなる気持ちは分かるのだがね。

最後に学者との対談があり、書評の歴史や欧米との比較まで言及しているのが嬉しい。なかなか親切な構成になっているのだ。とにかく、書評というある意味マイナーな「文芸作品」を取りあげ、1冊の本にまとめたことは賞賛に値すると思う。小説と異なり軽くあしらわれている書評を、プロの書評家として、プロの観点から、そのプロのノウハウを公開しているだから、一読の価値はあると思うのであった。