今更ながらの「1Q84」である。自称春樹ファンの我が輩が、2009年の大ベスセラーを今まで読まなかったのは、あまりに最初から売れすぎていたので敬遠してきたのだが、単行本2冊で4千円もするのも理由だった。が、ブックオフで、なんと2冊で800円!を見て、思わず買ってしまったんで、ホントは値段なんだろうな。(^_^;)

スポーツジムのインストラクターをしているクールな美人・青豆。予備校で数学を教えながら小説家を希望している天吾。若い二人の物語。青豆は女性に性的暴力をふるう男を暗殺し、天吾は少女が書いた「空気さなぎ」をリライトして大ベストセラー生み出していた。ところが「空気さなぎ」の世界が現実の世界を浸食し始め、いつのまにか青豆も天吾も、その世界に住む「リトルピープル」に追いつめられていき・・・。

この大長編は、二人の視点が交代する構成となっている。最初はお互いに接点がないのだが、その生い立ちが明かされるにしたがって、次第に接近していくことでストーリーは引っ張られる。1巻目では謎がバラまかれ、2巻目で謎はさらに深まり、読者は次第に春樹ワールドの深みにはまっていく・・・。

我が輩としては、この本が大ベストセラーになったワケがよく分からない。確かに村上春樹にしては、とても読みやすく通俗的な小説だ。もちろん、その派手な売り出し方が上手かったのが一番の理由だろうが、それにしても200万部も売れるほどの小説だったのかは疑問だな。
「ノルウェーの森」もそうだったが、やたら露骨なSEX描写が多いのも気になるし。

我が輩の好みは、未だに「羊をめぐる冒険」だし、デビュー直後の乾いた感性と文体が好きだったのだ。当時から暗喩を多用するまだまだ知られざる作家だったし。空前の大ベストセラー「ノルウェーの森」は発売直後に読んで、がっかりした覚えがある。あまりに、それまでの村上春樹の世界と異なっており、如何にも「売れ線」を狙っているように思えたのだ。
その後、一躍国民作家に成り下がった村上春樹に対して、それまではマイナーだった春樹ファンは、次第に引いていった(ように思えた)。

ま~なにはともあれ、この「1Q84」は春樹作品の集大成と言われるくらい、最近の春樹作品の特色や要素が詰め込まれているのだ。ミステリアスでファンタジックで、様々に解釈できる神話的寓話も取り込み、かつ通俗的でありながら文学的香りまで漂わせている。ベースは恋愛小説であり、そこにDV被害者やオウム真理教を思わせる新興宗教やら学生運動、メタ小説の要素までふんだんに盛り込み、サービス精神は旺盛なのだ。やはりこの小説は、オウム事件以降の世相の変貌を書いているなどと深読みする話ではなく、不可思議な謎で読者を引きづり込むエンターテイメントとして読むべきなのだろう。
もともと春樹ブランドは、スタイリッシュで、いかにも文学っぽいイメージが広まっており、普段小説を読まない人まで巻き込めたから、これだけ売れたのだろうな。

しかし我が輩は、3巻目は未読。結論づけるにはまだ早すぎるのだ。これだけバラマかれた謎を、最後にすべて回収できるとも思えないが、3巻目までとっくに読んだ人も大勢いるので、下手なことは言わない方がよいかな。
とにかく、まだお読みでない少数派の方々は、何年か後に出るはずの文庫本を待つか、我が輩のようにブックオフで叩き売られている単行本を買うのもよろしいかと。