「永遠のゼロ」「ボックス!」と大傑作を連発した百田尚樹。その新作文庫が出たのでは、飛びつかないわけにはいかない。オビも見ずに、買ってしまったのだった。

女だけの帝国が誇る最強の戦士マリア。生まれてすぐ、過酷な闘いの中で鍛えられ、疾風のように飛び、無尽蔵のスタミナで、いつの間にか最強の戦士となっていた・・・。

う~む、これではファンタジーかハタマタ、ライトノベルか?と思われるかもしれないが、なんとこれが「オオスズメバチ」の世界での話なのである。ビックリした。
昆虫の世界では最強のハンターであるオオスズメバチ。その女王バチが支配する世界を、1匹のワーカー・マリアの視点で語るお話なのだ。ファンタジーにはせず、昆虫たちを擬人化はするが、その生態や行動は昆虫そのもので描いている。最長でも30日しか生きられないワーカーたちは、他の昆虫を襲い、肉団子に変え、ひたすら幼虫のために、餌を運び続けるのだ。

ま~言ってみれば、「シートン動物記」の昆虫版なのだ。あまり知られていないスズメバチの世界を、昆虫自身の口から遺伝子やらゲノムを説明に使いながら、解説させている不思議な小説だ。

しかし、あの百田尚希なのだ。なんでハチの世界の話なんだ。いったいどんな読者を想定して書いているのか、我が輩にはまったく理解できなかった。熾烈な生存競争の中で、自らの使命を守ろうと懸命に生きているマリアの姿を、いくら感動的に描いても、所詮ハチなのだ。感情移入しろと言っても、いささか無理があると思う。

もっとも、最初から昆虫の世界をリアルに描いた希有な小説として読めば、面白いのかもしれない。が、せめて「ミツバチマーヤの冒険」とか、ディズニーアニメの「アンツ」くらい擬人化すれば、お子さまでも喜ぶお話になれたのにな。ゲノム理論を虫たちに語らせるのは、ちょいと違和感が残ったユニークな小説なのであった。