直木賞を受賞した若きホラー作家・道尾秀介の2009年の作品。日本推理作家協会賞を受賞したコンゲームである。

悲惨な過去から詐欺で食いつないでいる中年男・タケとテツ。そこに少女が舞い込み、やがて同居人が全部で5人と1匹に。しかし過去に因縁のあったヤクザに脅され、追いつめられていく。そこで人生の逆転を賭け、大計画を企てたが・・・。

ホラー系は好きではないので、この道尾秀介の小説には、今まで食指が動かなかった。しかしこの作品はコンゲームということもあり、人気作家のようなので、とりあえず読んでみることにしたのだ。

だが、読み始めてしばらくは、伊坂幸太郎の小説を読んでいるような錯覚に陥っていた。テンポの良い軽い文体と、洒落た会話。特技を持つ、クセのある登場人物たち。しかし、主人公たちが悲惨な過去を語りだしてからは、雰囲気が変容していくのだ。

追いつめられた弱者たちが、徒党を組んで頭脳で強者に立ち向かう、という復習劇。しかし、大ドンデン返しの結末は如何に・・・。というプロットは、よくある話。だが、それでも読者は騙されるのだから、ま~隅々まで計算された、ストーリーだ。後味も悪くはない。チョイと話が出来すぎの感はあるのだが、それも納得できる範囲である。

騙されたことに気がつかせないことが最高の詐欺で、騙されたことに気がつかせるのが手品と、秀抜な言葉で読者を騙している道尾秀介は、言葉のマジシャンだ。かつてアカデミー賞を受賞した名作「スティング」は、見事なコンゲームだったが、滅多には素敵なコンゲームに出会えない。日本の小説だと天藤真の「大誘拐」が、我が輩の未だにベストか。ま~この「カラスの親指」も、「大誘拐」くらい明るく後味が良ければ、大のお勧めになるのだがな・・・。

作者のクセか作風か知らないが、どうしても全体のトーンが暗い。ここは読者の好みだとは思うが、どうせ騙し騙されのお話なら、我が輩としては明るい話にしてもらいたかった。ま~それでも、読者を欺く小説としては、第一級の作品であることは確かである。