大人気作家・石田衣良のデビュー作であり代表作である「池袋ウエストゲートパーク・シリーズ(IWGP)」の第9作目である。

キャッチャー・オン・ザ・目白通り:エステのキャッチセールスに引っかかり、大金を失ったOL達。彼女らに報復を依頼されたマコトは、そのエステに潜入するが・・・。
家なき者のパレード:連続ホームレス襲撃事件の解決を依頼されたマコトは、ホームレスを食いものにしている組織の正体を探る。
出会い系サンタクロース:「出会い部屋」で働くOLを救うべくマコトは、出会い系風俗のからくりを暴く。
ドラゴン・ティアーズ-竜涙:強制労働のような外国人研修制度から逃げ出した中国娘を救うため、マコトの取った行動とは・・・。

現代版「水戸黄門」であるIWGPシリーズも、とうとう9作目にもなった。ワンパターンだとか新鮮味がないだとか言われても、相変わらずレベルは高く、売れ続けているのだから凄い。いつもながらも、現代社会がひた隠す、差別・貧困・犯罪をテーマに、池袋の果物屋の息子マコトが縦横無尽に活躍するのだ。

しかし石田衣良も、毎回々々東京の新しい風俗や犯罪を、よくキャッチし、把握し、その問題点や意外な解決策まで書けるもんだ。毎度ながら感心させられる。「家なき者のパレード」での、ホームレス政策の実態とその問題点。「ドラゴン・ティアーズ」の外国人研修制度の悲惨な状況と裏事情。一般社会人にはほとんど無縁の世界であり、見たくもない現実だ。石田衣良は、そんな社会の底辺に光を当て、あぶり出し、簡単には答えの出ない現実を、突きつける。

お話は定番通りに、最新風俗の紹介、依頼者からの話、マコトの活躍、大団円と軽快に進む。マコトを助ける角さん介さんにあたる、ストリートギャングのキング・タカシとヤクザの大物サルも、相変わらずの健在ぶり。さすが石田衣良の筆力は冴えている。

このIWGPシリーズは、社会問題を世に知らしめる、いわば広告とか教科書の役割を担っているかのようだ。きれいごとの解決策には頼らず、ヤクザの力まで借りて、現実的解決策を探る手法は、決して政策にはならないだろう。しかし困窮している人々にとっては、解決手段がなんであれ、救ってくれることが大切なのだ。そこまで追いつめられている人たちがいることを、世に問う姿勢は、貴重に違いない。

シリーズの最初の方は、単に珍しい風俗を取り入れたエンターテイメントにしかすぎなかった。しかし次第に、社会問題の告発へと重点を移すようになってきた。マンネリと言われようと、今後も鋭い社会批判を込めた、上質のエンターテイメントを書き続けてもらいたいものだ。