ベストセラーの歴史時代小説「のぼうの城」、忍者小説を蘇らせた「忍びの国」と立て続けにヒットを飛ばした和田竜が、今度は火縄銃による長距離狙撃者を主人公にした珍しい時代小説を上梓した。

戦国の世、勢力を拡大しようとしていた戸沢家・半右衛門は、逆に児玉家・喜衛兵に追い込まれていた。そこで、鉄砲による狙撃の天才少年が戦場に駆り出そうと、己の信念を曲げ、大胆な行動に出るが・・・。

しかし毎回、趣向の異なる時代小説を出してくれるもんだ。迫力ある城攻めを描いた「のぼうの城」、凄腕忍者が活躍する「忍びの国」、そして今度は、火縄銃による長距離狙撃が、戦国時代の戦法や戦場をどれほど変えてしまうのかを描いているのだ。

まず、主人公・半右衛門のキャラが良い。いかにも戦国武将らしい強力で勇猛果敢。敵将・喜衛兵も負けず劣らずの強腕の軍略家だ。無能な当主に翻弄されながらも、果敢に戦いに挑んでいく。また、鉄砲の天才少年・小太郎もユニークだ。心根があまりに優しいため、祖父はその銃の腕をひた隠しに隠していたのだ。

個性的な登場人物たちが繰り広げる、迫力ある合戦シーン、凄惨な籠城戦、忍者の暗躍、そして意表を突く遠距離狙撃。アクロバティックなアクションシーンが続く。予想外の展開に驚かされるし、史実に基づくという、当時の火縄銃の性能や戦術が意外で面白い。

ま~忍者が登場すると、一気にフィクションっぽくなるが、奇想天外でこれはこれで楽しい。文句なしに楽しめる、第一級のエンターテイメントなのである。