長野県の奥深い山中で、行方不明になっていた女性の頭蓋骨が見つかった。妻の死因に疑問を抱いた三井は、妻と同様に失踪した女子大生の捜索隊に参加する。ところが探索中に、さらに事件が勃発してしまう。この山には、何が潜んでいるのか・・・。

という、モンスター・パニック・エンターテイメントだ。出だしは静かに始まり、次第に何かが起こりそうな雰囲気となり、一気に事件が走り出す。典型的といえば、そうなのだが、スピーディーで上手い語り口だ。

何か異様な生き物・モンスターが、次々と事件を引き起こし、その正体がつかめず次第にパニックに陥る。そんな小説には、柴田哲孝の傑作「TENGU」とか「KAPPA」とかがある。どれもパターンとしてはよく似ており、結局その生き物の正体を探るところを如何にミステリアスに描くか、その生き物と対峙するクライマックスを如何にサスペンスフルに描くかが、勝負となる。
後は、その生き物が実在する動物だったり、遺伝子操作云々の架空の生き物だったりするのだが、架空の生き物の場合には、その説得性の出来不出来で小説の評価が決まってしまうのだ。

この点で、「ファントム・ピークス」は良くできたお話だ。出だしの牧歌的雰囲気は、もちろんその後の惨劇を際だたせるし、何が潜んでいるのか分からない、不気味な山奥の描写もミステリアスだ。

さらに、人間と自然の共生に関して、地元民と学者の論争は難しい問題だ。地元民は動物が生活を脅かせば、駆除は当然であり、学者は貴重な自然や生き物は保護するのが当たり前と考えるだろう。正解などあるはずもなく、どこでバランスを保つか、妥協点を探るしかないはず。
こんな問題もあることを、読者に意識させ、小説に奥行きを持たせているところも良い。身勝手な人間が、どうすれば自然との共生を図れるか、そんなテーマまで取り込んだモンスター・パニック小説であった。