森見登美彦「太陽の塔」新潮文庫 237頁 ★★★★

 

いや~久しぶりにノ~テンキに笑える、男子青春ものを読むことができた。男子青春物語といえば昔からいろいろとある。「坊ちゃん」も入れても良いが、やはり「ライ麦畑でつかまえて」と、我輩お気に入りの庄司薫「赤ずきんちゃん気をつけて」4部作は外せない。自意識過剰で繊細でピュアな魂を持つ若者はいつの時代にもいるものだが、この作品の主人公はチョット違う。もてなくてビンボーなのはお決まりだが、妄想癖がハンパじゃないのが当世風。ま~、一人暮らしの若者ならこの程度のモーソーぐらい、もしかしたら当たり前かもしれないのだが・・・
京大生の一人暮らしの男が主人公。女性にはまったく縁が無いのだが、奇跡的に得た恋人にも振られてしまうと、ストーカーのごとくつけまわし、詳細レポートを書くのが日課。もてない男が忌み嫌うクリスマスが近づくと、さえない友人たちとクリスマスぶち壊し作戦を画策するのだった。
別に事件が起きるわけでもなく、男子学生の怠惰な日常生活を描いているだけなのだが、これがまた笑えるのだ。失恋してプライドが傷つき、凍えるような冬の京都で、主人公は恋敵と低次元な闘いを繰り広げるのだが、豊富な知識とボキャブラリーを駆使してモーソーが炸裂する様がすごい。変人の周りには変人の友人たちが集い、ろくでもない事をしでかして学生生活を過して行くのだが、それにしても腐っても京大生だからどんなバカなことをしても許されるのだ。次第にモーソーなのか夢なのか、ハタマタ現実なのか区別ができなくなってしまう展開もユニークで愉快。
世の中のもてない男達のために捧げる、男汁がただよう、「日本ファンタジーノベル大賞受賞」の作品なのだ。