パオロ・マッツァリーノ「つっこみ力」★★★ ちくま新書

「愛と勇気とお笑いと」をモットーにした謎の戯作者が、講演会で公演したスタイルのユニークな新書なのである。正しい議論だけではつまらない。だれも聞いてくれないなら無いのと同じ。同じ議論なら面白い方が絶対良い。そこで「つっこみ力」なのだそうだ。訳のわからない難しげな単語を操って煙にまこうとする学者たち。わかりにくさは罪だと言い切り、伝わってナンボなのだ、と明快な語り口で面白おかしくおしゃべりしていくお話なのである。
本人は学者ではなく「戯作者」と称し、「メディアリテラシー」を「つっこみ力」と言い換え、メディアから大量に垂れ流される情報を単なる「批判力」でなく、ユーモアを交えた「つっこみ力」で批判しアピールすべきだ、と言う。確かに論理的に批判するだけでは、例え内容が正しくても分かりづらくてはアピールできない。批判だけでは何も生み出せない。相手に対する寛容の精神「愛」を持ち、ユーモアのある「つっこみ」によって学者や専門家の繰り出す「脅し」に対抗できる。そうすれば世の中を、面白くすることができるのだ、そうだ。そりゃごもっともなんですが、では具体的にどうすればよいのでしょうかね?
後半は、データを駆使した「統計漫談」。お題は「失業率と自殺の関係」と、けっこう深刻なテーマなのだが、データを駆使していかに社会科学の常識がいい加減なのかを明らかにしていく。ま~社会科学とやらは、データを自分の都合よいところだけピックアップし、つぎはぎする事で成り立つ学問だということは気がついていたのだが、露骨に社会学者?自身が言い切ったことは画期的。自然科学と異なり正解があるわけではなく、事実をどう解釈するかだけの学問なので、当然といえば当然なのだが、それにしてもあからさまに社会科学の学説が、実にいい加減なもんだと言い切ったことは爽快なのである。
表現方法が芝居がかってユーモラスと言うかマンガチックなので、ふざけ過ぎのように感じるのだが、言っていることはいたってまともでそれこそ正論なのである。社会科学自体をこのような切り口で批評した本を初めて読んだので、なかなか新鮮で面白かった。軽く読めるので、それこそ思わず「つっこみ力」を身につけてみせようと思わせる珍品なので、諸兄方にも一読をお薦めしたい。ま~それにしても、実際どうすれば身につくのかはまったく不明なのだが・・・・