北村薫「リセット」★★★★

北村薫「時と人の3部作」の最後の3作目。1作目『スキップ』は、主人公の女性の時間が25年跳んでしまったお話。2作目『ターン』は、主人公の女性が24時間という時間の中に閉じ込められてしまうお話。この3作目では戦時中に引き離された男女が、過酷な運命に翻弄されながらも、時を越え転生し再開するお話。
若い女性を描かせたら天下一品の北村薫。この『リセット』では、戦時中の裕福な女学生の心情を、相変わらずの細やかで丁寧な描写の積み重ねで、見事に表している。もしかして北村薫という人物は、戦時中に少女時代を過ごしてきたのではないのか、と疑いたくなるほどのリアリティなのである。もっとも我輩は少女になったことはないので、ほんとのことは知らないのだが・・・
そういえば『バッテリー』の著者あさのあつこは、少年を主人公とするお話が大のお得意。純粋で今にも壊れてしまいそうな少年を描くことがとても上手いのだ。どうも作家というものは、異性を描かせた方が理想的に描ける分、得意になるのかもしれない。
ま~とにかく、お話は暗い時代である戦時中から始まる。芦屋の裕福な女学校に通う真澄は、次第に忍び寄る戦火の影を感じながらも、青春時代を謳歌していた。しかし、恋心を抱いていた修一は戦火で失ってしまう。やがて昭和30年代になり、小学生5年生の村上和彦は、真澄と出会うと前世を思い出してしまい、そして・・・。
今回のお話は、かなわぬ恋を成就させるため、人生を何度でも繰り返したい、という想いを描いた優しい作品なのだ。前2作であまりにも過酷な試練を主人公に課したので、最後はハッピーエンドのお話にしたかったのだろう。運命に翻弄されても、離れ離れになっても、その想いは魂に引き継がれ、最後に必ず出会うと信じることで、その願いは成就する。そんな甘いラブストーリーなのであった。