これまた久しぶりに吉本ばななを読んだ。「キッチン」や「TUGUMI」の時代以来なので、20年近く読んでいなかったようだ。昔はかなり愛読した方だったが、その後はミステリィの方へシフトしたので、トンとご無沙汰していたのだ。知らない間に「吉本ばなな」から「よしもとばなな」に改名したそうだが、ま~大差ない話。
それにしても相変わらず上手い小説を書いている、というのが感想。この「とかげ」は、6編が入っているかなり短い短編集なのだが、1つ1つが心に響く短編ばかり。「癒し」が共通のテーマのようだが、各編はバラエティに富んだ内容であり、人生のどこにでもある生活の一断面を、鮮やかな切り口で切り取ってくれてみせる。
幼少時のある事件がもとで、共に心に傷を抱えこんだカップル。運命的な出会いと再生を穏やかにえがく「とかげ」。新婚なのに真っ直ぐ家に帰りたくないサラリーマンが遭遇する不可思議な出来事を、寓意的に描く「新婚さん」などなど。孤独な現代人が、生きていくために人と出会い、交わり、傷つき、そして再生していく様を、あるときはリアルに、あるときは寓話として描いていくのである。どれもが最後は救いがあるので読後感は良く、それこそ癒される短編集であった。