集英社新書

ある意味非常に怖い本であるが、重要な本でもある。現代政治においてメディアが果たしてきた役割を、冷静に冷徹に分析した論文なのだ。近代国家は、独裁国家はもちろんのこと共産主義国家でも、例え民主主義国家であっても、支配層は常にメディアをコントロールして大衆から真実を隠そうとしてきた。その手法は、常に進化し続けて巧妙化に構築され、米国の強圧的な外交政策やテロ、戦争政策を支えてきたのである。実態は捻じ曲げられて報道され、政策に都合の良い事実のみ取り上げることで世論を形成してきたことを、チョムスキーは舌鋒鋭く指摘しているのだ。
確かにアメリカは自国に対する敵対行為をテロと呼ぶが、アメリカが中米や中東の市民に対して同様な無差別攻撃をしてもテロとは呼んでいない。アメリカが支援するイスラエルがどんな残虐行為をしようが非難はしないが、イラクが反撃しようものなら徹底して叩くのがアメリカのやり方なのである。チョムスキーは、アメリカが史上最強の軍事力をバックに覇権戦略を押し進めてきた歴史的経緯を詳細に分析し、いかにアメリカが世界最大のテロ国家であるかを証明しようとする。
著名なアメリカ人であるチョムスキーは、筋金入りの反戦理論家であり、なまっちょろい日本の知識人に対しては、天皇をなぜ戦争犯罪人として告発しないのかと、容赦なく問いただすのである。国家権力に迎合するジャーナリストを徹底的に批判し、闘わない知識人を断罪し、確固たる信念で人類を存続するための方策を求めてやまない勇気には、畏敬の念を感じてしまうのであった。