小川洋子の連作短編集なのである。女性作家が主人公なので、作家自身の物語かと思わせてしまうほど、なかなかリアルでしかも切なく淡々とした味わいのある短編集。

この女性作家は、知り合いが失踪したり、交通事故にあったり、不倫したり、シングルマザーになったり、果ては失語症にまでなってしまう。ま~ありとあらゆるトラブルに巻き込まれているのだが、小川洋子の静謐な文章にかかると、なぜか何事もないありきたりの日常生活が淡々と続いているように思えてしまうのだ。不思議な作家だ。

普通の日常風景を描いているようで、実はそこから少しだけずれた異世界を垣間見せてくれるのが、最大の魅力なのだ。どちらかというと「博士の愛した数式」より、「ブラフマンの埋葬」に近い世界観なのである。