良い意味でも悪い意味でも、いかにも石田衣良らしいスマートな小説。大金持ちの天才クリエーターが浮世離れした活躍をする、都会的でミステリアスで、かつスタイリッシュな恋愛小説なのである。
お話は、天才的なゲームソフト製作者・相良が、新作のモデル・ヨリをコンビニで見つけるところから始まる。モデルとして完璧な「人形」を演じるヨリに相良は次第にひかれてしまうが、彼女には相手の不幸が見えてしまうという異能があった。新作ゲームの完成が近づくにつれ、大手ゲーム会社が主人公の会社を乗っ取ろうと画策し、ヨリの存在でフィアンセまで失いかけるが・・・。
この作品は、オタクな『アキハバラ@DEEP』をベースに、大人気『池袋ウエストゲートパーク・シリーズ』のテイストをまぶしたような感覚である。発表時期をみると、アキハバラ → IWGP → 東京DOLL なので、ゲーム業界をネタにして似たような感覚の作品を書き上げたようだ。世間的にはこの作品はあまり評判がよろしくないようだが、我輩としてはスタイリッシュなこのセンスが結構気に入っているのだ。確かに、洋服のブランドや高層ビル群などあまりにも今の風俗を取り込みすぎているので、十年後には簡単に風化してしまいそうな小説である。しかし逆に言うと、たった今の時代風景や風俗を見事に切り取ったエンターテイメントともいえるのである。