「シミタツ」1980年のデビュー作なのだ。知らなかった。こんなにレベルの高い冒険小説が日本にあったとは・・・。ま~名作「行きずりの街」で初めてシミタツ体験をし、やたらに濃いドラマとして感銘を受けたのだが、デビュー当初からこの水準とはビックリである。
今から30年近くも前なので、政治状況は現在とまったく異なり、北方にある日露国境線は緊張感があった。だからこそ、このようなスパイ活動にもリアル感があり、当時は冒険小説が活況だったのだろう。
元トップクライマーだが現在は小さなボート屋のオヤジが、突然国家間のスパイ合戦に巻き込まれ、北方領土まで侵入させられてしまう。国家に操られそうになるが、真実を探るために国家に対して孤独な闘いを挑んでいく・・・。
冒険小説の王道、いわゆる「男の美学」を貫く頑固者キャラが主人公。さらに過酷な北方領土の大自然をリアルに描き、そこに挑む主人公の活躍も、クライミングやセーリングの豊富な知識をベースにしているので実に説得力がある。派手な活劇や意外な展開もあり、読者をまったく飽きさせない力量は感嘆させる。硬派の冒険小説を堪能させてくれる名作である。