都会系ミステリーアクションの「午前三時のルースター」「ヒートアイランド」。クライムのベルの傑作「ワイルドソウル」。冒険小説が得意というイメージの「垣根涼介」が、意外にもリストラ請負人を主人公にしたサラリーマン小説も書いていたのだ。しかもこの連作短編集で、「山本周五郎賞」を受賞している。
プロのクビ切り面接官の真介。まだ若いが、リストラ対象の社員と面接して退職勧告するのがお仕事。毎回様々な会社に行って、セクハラ上司や無能な管理職にクビ切りを言い渡しているのだ。ある日、気の強い年上女性のマネージャーと面接した真介は、彼女に好意を寄せて、ある計らいを企てる・・・。
ま~プロのクビ切り会社などというかなり無茶な設定、だけど今のご時勢ならあっても不思議ではない絶妙な設定なのだが、たとえどんなにヒンシュクをかう仕事にせよ、真摯な態度で仕事に臨み、自分に誠実に生きている主人公に対して、次第に肩入れしたくなるのだ。軽めの文体でスピーディーに読め、様々な業界の裏事情を描くことで情報を提供し、もちろん仕事や情事に奮闘するというサラリーマン小説の王道は外さない。なぜか、かなり年上のバリバリのキャリアウーマンにしか興味を示さない真介なのだが、これがなかなか今時っぽく、なぜか共感してしまうのだ。
結局のところ、真介の持つ複雑だが魅力的なキャラクターにリアル感があり、その他の登場人物たちも生生しい存在感を持っているので、素直にスイスイと読めてしまうのだろう。真介には特殊な才能や技能があるわけではなく、お話も波乱万丈の展開があるわけではない。しかし困難の問題に対して真剣に着実にこなし、最後は納得感のある解決をする様は、感動的でさえある。地味だが味わいのあるサラリーマン小説なのだ。