隠れた人気作家『米澤穂信』。ま~最近は年間ベストミステリーに連続して選ばれているくらいなので、隠れているわけではないが・・・。とにかく「春季限定いちごタルト事件」や「夏季限定トロピカルパフェ事件」というユニークな傑作ミステリーで有名なのだ、というか我輩もこれで知ったのだ。いわゆる「日常の謎」派なのだが、これらのミステリーには読んだ人にしか分からない、独特の風変わりなセンスがあり、けっこう気に入っている作家なのだ。
雨宿りをしていた外国人少女マーヤと、偶然出会った高校生のカップル。何にでも興味津々なマーヤにとって、日本の日常生活は謎だらけだった。何事にも関心がもてない男子高生と、何事にも超然たる態度の女子高生は、ヒョンなことからマーヤを助けることになったが、次第に純真なマーヤに惹かれていく。やがてマーヤは帰国するのだが、消息不明になってしまう・・・。
帰国したマーヤを、日本の友人たちが手がかりを求めて回想する形式で話は進む。どこの国から来てどこに帰ったのか、マーヤの謎を中心に推理は進み、やがて哀しい結末を迎えてしまうのだ。
大きな事件も冒険もあるわけでは無く、日常的な高校生活が淡々と描かれているだけなので、中高生向けの青春ミステリーに分類されてしまいそうだが、そんなレベルではない。一人の少年が、自分の存在や社会に対して覚醒し、やがて青年へと脱皮する姿を爽やかに描き出す、ほろ苦い青春小説なのだ。お話全体にわたる謎でストーリーを引っ張っているが、日常の細々とした謎は難易度が高く、ミステリーとしてはいまひとつ。しかし微笑ましい国際交流を軸に、恋や友情を丁寧に描いた青春小説として、大人にも読んでもらいたい。