傑作SF巨編の下巻なのだ。しかしいくら巨編だからといって、なにも上巻(文庫では1,2巻)と時期をずらして発売しなくてもよさそうなものだが。(京極なら全部で1冊なのに・・・、は極端か)
何はともあれ、ワクワクするプロローグから始まり、ファーストコンタクトものとして素晴らしい着想が示され、惑星改造という遠大なスケール感のある展開で傑作の期待を高めた上巻であった。そして下巻(文庫の3,4巻)である。
地球での動物達との闘争から一転し、今度は宇宙空間が舞台となる。すべての異変の元凶である彗星パンドラに対して、各国は総力を挙げてロケットを開発し、パンドラ探査計画を発動する。地球周回軌道上で建造された複数の宇宙機は、事故や政治妨害にあいながらも地球を出発し、パンドラとのコンタクトを目指し突き進んでいく。ところがパンドラ側からの反撃に遭い、やがて・・・。
読後感は、ま~なんというか上巻のスケール感からは多少尻すぼみかな。文庫4巻目にある見事な解説がなければ、納得感もなかったかもしれない。読了後の違和感やモヤモヤ感も、この解説を読めば解消する素晴らしい解説なのだ。ようするに、地球に進出してきた地球外生命体(らしきもの)との紛争は下巻になるといったん休止してしまい、宇宙機の建造を巡る国際紛争、覇権争いが物語の大半を占めてしまう。宇宙機の建造に関して日本が中心的役割を果たし、それに対する中国やロシアが横槍を入れてくるなど、ファーストコンタクトSFにはそぐわないエピソードが続くと、やはり興が削がれてしまうのだ。裏でパンドラが画策していたからなどというならまだしも、国際紛争も中途半端なまま最終章に一気に突入してしまうので、う~むになってしまう。
上巻が素晴らしい分、どうしても下巻に対しては辛くなってしまったが、全体としてはハードSFの傑作であることにはかわらないのだ。あまりにもスケールを大きくしてしまった分、話の展開に多少の無理が出てくるのはしかたがない。ここは素晴らしい着想と魅力的なSF的ガジェットの数々を楽しむべきなのだ。