『直木賞受賞!』のトンデモ精神科医『伊良部シリーズ』第2弾。大怪作「イン・ザ・プール」の続編だが、まさかこんな変な連作短編集が直木賞を受賞するとは思っていなかった。もちろん、このシリーズの面白さは折り紙つきなのだが、ま~主人公である伊良部のキャラクタじゃ、好き嫌いが出るだろうな、という感じがしていたからだ。ユーモアというか、くだらないギャグが多いこんな小説でも、直木賞を取れたことは、素直に喜ばしいことだ。
まともに跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗りの話「空中ブランコ」、先端恐怖症になってしまったヤクザの話「ハリネズミ」、義父のカツラをどうしても取りたくてたまらない医者の話「義父のヅラ」、ボールをまともに投げられなくなったプロ野球選手の話「ホットコーナー」、同じ設定の話を書いたかどうかが、どうしても気になってしまう小説家の話「女流作家」。どれもおかしな悩みを抱える患者が、色白デブで注射フェチの伊良部医師と、Fカップ看護婦のコンビにかかると、なぜかいつのまにか悩みを解消してしまうのだ。単にばかばかしい話だというわけでもなく、意外と人情話になっているのだ。どこまで計算して行動しているのか、単なるバカなのか、謎のキャラがあまりにも破天荒な行動をするのが単純に楽しい。
ま~実はそれほど単純なバカ話というわけでもなく、「女流作家」などは主人公の職業だけ変えたワンパターンの恋愛小説ばかり書いている恋愛小説家に対して、かなり辛辣で皮肉な話になっているのだ。このあたりのブラックなユーモアが、人気の秘密なのだろう。前作と異なり下ネタが無い分、万人にお薦めの怪作なのだ。