恩田陸を再発見できる、素晴らしくロジカルな推理短編集なのだ。恩田陸のミステリィといえば、SFやホラーにいつも流れてしまい、どちらかというと物語としての面白さが特色となっていた。なので、失礼ながら本格的バズラーが書けるとは思ってもいなかった。
既に退職したダンディな元判事が遭遇する、様々な不可思議な出来事。無意識のうちに推理してしまう頭脳が、日常の謎を鮮やかに解き明かす。象を見ると耳鳴りするという婦人が語る、英国で遭遇した奇怪な象の殺人事件の話。人喰い給水塔の話。たった1枚の風景写真から、連続殺人事件の犯人の動機を探り当てる話などなど。全部で12のごく短い短編ばかりなのだが、どれも魅惑的な謎と鮮やかな謎解きが用意され、上品な味わいがある。文庫らしからぬ装丁も素敵な、お薦めミステリィなのだ。