今、人気沸騰中!(我輩だけだが)米澤穂信のデビュー作であり、『角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞受賞』(な、長すぎるタイトル・・・)であり、かつ古典部(未だに活動内容が不明の部)シリーズの第1弾である、青春ミステリィなのだ。と、ま~いろいろと修飾語があるわりには、無名の作品のようだ。今は、角川文庫から出ているので我輩でも入手できたのだが、最初は『角川スニーカー文庫』というYAというか、ライトノベルとして売り出されていた。これでは一般人には目にとまるはずもなく、この名作もしばらく埋もれていたようだ。それが「春季限定いちごタルト事件」で注目されてから、芋づる式に他の作品まで売れ始めたので、『角川文庫』に納まったと、我輩は勝手にニランデいる。
前置きはさておき、この「氷菓」はこんなお話なのだ。何事にも積極的に関わらない主義である高校生の奉太郎が、姉の命令で廃部寸前だった古典部に入る。そこで、この省エネ少年と好奇心旺盛な少女が遭遇する、いつのまにか密室になった教室、毎週必ず借り出される本、あるはずの文集をないと言い張る少年、などの謎を解決していく。そして、少女の叔父が関わった三十三年前に起きたある事件の真相に迫っていくのだった。
一切人が傷つかない、いわゆる『日常の謎』タイプの作品。ミステリィといえば殺人事件がお決まりなのだが、最近はこの手のタイプも流行っていて、けっこう我輩もお気に入りなのだ。大半は謎といえるほどのものでもないのだが、この作品では主人公達のキャラがタッテいるのでなかなか楽しませてくれる。しかも最後に「氷菓」の謎があるので、この作品に彫りの深い陰影を与えてくれている。この作者は若いが、「さよなら妖精」などもそうなのだが、意外と重いテーマを潜ませ、一見お気楽な作風を最後に一転させ、深みを与えるのがとても上手い。主人公の少年の性格が、どの作品でも同じなのはご愛嬌だが、脇役達のキャラがそれぞれ個性的なのも楽しい。「秋季限定XXX」も楽しみだが、この古典部シリーズもなかなか期待できるシリーズなのだ。