今の子供達はうらやましい限りだ。なにせこんなにも素敵なものがたりを、読めるのだから・・・。そんな理不尽な嫉妬を覚えるほど、とっておきの短編集。『路傍の石文学賞』(初めて聞く文学賞だな~)を受賞している。
シューマン「子供は眠る」、バッハ「彼女のアリア」、サティ「アーモンド入りチョコレートのワルツ」。名曲をモチーフにした短編が3つ。毎年少年達だけで海辺の別荘で夏を過すお話。旧校舎の音楽室で出会った不眠症の少年、少女の淡い恋を描くお話。ピアノ教室に出現した奇妙なフランス人のおじさんと、少女達の出会いを描くお話。どのお話にも、どこかでピアノの調べが聞こえてくる、優しくてせつない物語ばかり。誰でもどこかで必ず遭遇する、心ときめく出会いと切ない別れ、そんなお話たち。
中高生向けだからといって、この本を子供達だけに読ませたのでは、あまりにももったいない、昔子供だった人にはムネキュンなお話ばかりなのだ。我輩の世代だと、少年少女世界の名作文学なるものは、総じて暗かった。それこそ「路傍の石」とか「ああ無情」とか、「小公女」とか、みんな暗い話ばかりだったイメージがある。だいたい欧羅巴の文学というものは、・・・・・。とか、今頃になって文句を言っても始まらないのだが、ま~こんな素晴らしいお話が、あっても当然のように読んでしまう子供達は、素直にうらやましい限りなのだ、とおじさん世代は感慨を覚えたのであった。