またまたマイブーム中の「米澤穂信」なのである。今回もなかなか素敵なアイデアのミステリィなのだ。期待に違わず『日常の謎』を中心にした単なる青春ミステリィなどではなく、本格的装いを施した傑作ミステリィとなっている。
前作「氷菓」に続く、高校生の奉太郎たちが活躍する『古典部シリーズ』の第2弾。文化祭に出展するための自主制作ミステリィ映画が、脚本家のダウンによりラストを撮らないうちに中断してしまった。その映画の中では、廃屋の密室で少年が腕を切り落とされて死んでしまったのだが、犯人も犯行方法もまったくの不明。奉太郎たちは映画の結末探しを依頼され、乗り出すことになったのだ。
ミステリィの王道『密室殺人』を、映画製作の形式で提供するとはとっても新鮮。殺人事件がまったく出てこない『日常の謎』派作家の米澤穂信が、そのポリシーを曲げずに『密室殺人』を書けたことが、意表をついてうれしい。しかもそのトリックが思ったより斬新なのだ。我輩は30年以上前からのミステリィファンであり、しかもディクスン・カーが最初のお気に入り作家ぐらいの『密室好き』。なので星の数ほどある『密室殺人』を読んできたのだが、それでも「愚者のエンドロール」のアイデアは新鮮で楽しかった。
京極夏彦は大好きな作家だが、トリックそのものは、ミステリィとしてはほとんど反則技が多い。ま~謎そのものでストーリーを引っ張っていくタイプではなく、妖怪やら宗教やらの薀蓄を語るのが主眼なので、トリック自体に目くじらをたててもしかたがないのだが・・・。その京極に比べれば、この米澤の方がよほど正統派だ。青春ミステリィと銘をうっているが、そんな軽いものでもない。高校生の奉太郎が成長していく様子が描かれるので、青春ものとも言えるのだが、我輩としては純粋ミステリィとして、全人にお薦めしたいのだ。