北村薫の待望の新ミステリィシリーズなのだ。今度の舞台は昭和初期。今度も上流家庭のお嬢様が主役。相変わらずの箱入り娘的純粋無垢な女学生が主人公なのだが、ファンにはここがとっても魅力的なところなのだ。
昭和七年、絵に描いたような上流家庭・花村家にやってきた、当時には珍しい女性運転手、別宮みつ子。令嬢の英子は、親しみを込めて彼女をベッキーさんと呼ぶ。頭脳明晰で正義感の強い英子が、新聞に載った変死事件の謎を解く「虚栄の市」、英子の兄を悩ませる暗号の謎「銀座八丁」、映写会上映中の同席者の死を推理する「街の灯」の全三篇。
昭和初期の暗雲が立ち込めて来る時代感覚、超上流社会における優雅な暮らしぶり、無垢な女学生とオスカルのようなお抱え運転手、何かこう並べるとほとんど少女マンガの世界のようにも見えるが、そんなことはない。ここはあくまで独特の優しさに満ち溢れた北村ワールドなのだ。男性願望を具現化したようなヒロインキャラだけの魅力で読ませているわけではなく、ミステリィとしての質もキチンと保つことで、それこそミステリィとしての品格をキチンと保っているのだ。なので、我輩にとっては逸品なのである。