やっと帰ってきました。何と9年ぶりの新作『沢崎探偵』なのだ。いくら寡作な作家だといっても、あまりにも長く待たせたものだ。もっとも我輩は前作からだと、4年ぶりの再会なのだが。ま~それにしても国産ハードボイルドとしては、相変わらず第一級品であることは間違いない。
銀行強盗を自首した父の無実を証明してもらいたい、と訴えてきた女性を沢崎は、警察に送り届ける際に、狙撃事件に遭遇してしまう。誰が何のために撃ったのか。なぜ銀行強盗の罪を被ろうとしているのか。警察嫌いの皮肉屋探偵である沢崎は、暴力団組長や老資産家と渡り合いながら、真相に迫っていく。
短いセンテンス、テンポ良い展開、皮肉や警句ばかりの台詞、複雑なプロット、薄皮を一枚一枚剥がしていくように次第に明かされていく真実、いつも通りの期待通りのハードボイルドなのだ。1988年に「そして夜は甦る」でデビューして20年。その間に長編が4冊と短編集が1冊のみ。この探偵沢崎シリーズとは、十数年前に直木賞を受賞した「私が殺した少女」を読んで以来の付き合いだが、あまりにも寡作なため、しばしばその存在すら忘れてしまっていた。それでもこの硬質な文体に出会うと、すぐにその世界に入り込むことができる。
似たような国産ハードボイルドに、矢作俊彦「リンゴオ・キッドの休日」「真夜中へもう一歩」がある。こちらのほうの主人公も洒落た台詞使いなのだが、あまりに華麗な比喩を用いるので現実離れした感がある。ま~ハードボイルドの主人公のセリフは決まらなければならない、というお約束があるのでしかたがないのだが。