人気作家「伊坂幸太郎」の、いかにも伊坂らしいクールでスタイリッシュな連作短編集。ちょうど今、金城武主演の映画としても上映中なのだ。今度の伊坂の仕掛けは、主人公が音楽好きでクールな死神というところ。「死の宣告」という重いテーマを、奇妙な死神の目から描くことで、意外と爽やかに味わうことが出来る。
クレーム処理とクレーマーに悩む女性の話「死神の精度」、任侠の世界に生きる珍しいやくざの話「死神と藤田」、吹雪で閉じ込められた洋館での連続殺人事件「吹雪に死神」、片思いの青年にストーカーに悩む女性の話「恋愛で死神」、殺人犯と旅する「旅路を死神」、老婦人の生き様を描く総集編「死神対老女」と、ミステリィ風・恋愛小説風・ロードノベル風などバラエティに富んだ6つの作品から成っている。当然、伊坂らしく他の作品でおなじみのキャラが登場するので、伊坂ファンには十分楽しめるのだ。
ま~この作品世界に、素直に入り込めるのは、もしかすると伊坂ファンだけの恐れはある。なにせCDショップに入りびたりの死神という設定に、まず違和感を抱かない読者はいない。デビュー作『オーデュポンの祈り』でしゃべる案山子を登場させた伊坂なので、この程度の世界観はファンなら慣れ親しんでいるが、フツーの読者は戸惑ってしまうだろう。ま~そこは我慢して読み進めれば、次第に伊坂マジックにハマッテいき、最後は思わぬ爽やかな感動を得られるはずなのだ。
『ラッシュライフ』、『重力ピエロ』、『アヒルと鴨のコインロッカー』など、奇妙で味わい深い小説を立て続けに放つ伊坂作品の中でも、特に奇妙さ・違和感を感じた作品であった。