『ひきこもり探偵』初登場!と言っても、安楽椅子探偵というわけではないのだ。最初は、単に「ひきこもり」というキャラをつけただけの探偵ものかと思っていたのだが、それほど単純ではない。青年二人の成長の物語でもある異色のミステリィなのだ。
複雑な生い立ちから、ひきこもりになってしまったプログラマーの鳥井。その親友である坂木は、日夜、鳥井を外の世界に連れ出そうとしていた。料理が趣味の鳥井の食卓で、坂木が日常に潜む謎を問いかけると、その鋭い頭脳で見事に謎を解き明かしてくれるのだ。男を襲う通り魔の謎。視覚障害者を尾行する者の真意。歌舞伎役者に送りつけられるプレゼント攻勢の理由など。
この、ひきこもり青年とその無二の親友という設定に、納得感を持てるかどうかが、この小説の好き嫌いの分かれ目であろう。あまりに善意過ぎて涙もろい坂木のキャラは、このお話の核であり、ここについていけない人は読むのがつらくなるはず。しかし、親友のために職業を選んでしまうほどのお人よしの坂木を、理解できる人なら、このなかなか感動的な青春小説が好きになるはずである。謎そのものは、いわゆる日常の謎で、それほど凝ったものではないが、坂木と鳥井の二人の友情と成長のお話として読むのなら、素敵でそして感動できるはず。パズラー向けではなく、さわやか青春物語好きの人たちに、ぜひお薦めするのだ。