久しぶりの森ミステリィS&Mシリーズ再開か!と大いに期待。しかものっけから、密室の中のカラフルな死体が登場なのだ。さっそくミステリィ界のヒロインである、スーパー女子大学院生『西之園萌絵』の大活躍のはじまりはじまり。と、ワクワクしながら読んだのだが・・・。
Yの字に吊られた派手な死体が、密室の状況で発見された。しかも発見の様子はビデオで逐一録画されていたのだ。そのビデオのタイトルは「φは壊れたね」。この挑戦的な事件に、偶然居合わせた学生と、その仲間である西之園萌絵たちが解決に挑むのだった。
う~む、どこかで読んだことがあるパターンなのだ。我輩はこれでも5年前、森博嗣のS&Mシリーズにハマり、2ヶ月で全10冊立て続けに読んだことがある。続けてVシリーズも5冊ほど読んだところで、さすがに飽きてしまった、という経緯がある。その後もポツポツと森博嗣を読んでいるので、実は過去5年間300冊で作者別統計をとると、最も多く読んだ作家の第1位は、25冊の森博嗣になってしまう程のファンなのであった。このS&Mシリーズの魅力は、N大学工学部助教授『犀川創平』とお嬢様大学生『西之園萌絵』二人の強力キャラと、数学的哲学的考察的文章にあった。ところがこの「φは壊れたね」では、西之園萌絵は登場してもあくまで脇役であり、犀川創平などは登場すらしないし、哲学的話も皆無。う~む、これではS&Mシリーズではない!と思ったら、オビにGシリーズと書いてあった。てことは、誰がこの新シリーズの主人公なのだろうか・・・。従来のキャラを超えるような人物は見当たらないし、西之園萌絵が登場していては他のキャラが、かすみそうだし。これこそ謎だ!とか言っても次の作品を読めば分かることなのだが。
ま~S&Mだと思わなければ、作品そのものはミステリィとしての水準は充分保っているのだ。密室殺人というマニア垂涎の派手な演出に、今風女子大生の生態描写、さすがツボはおさえている。今まで森ミステリィをまったく読んでいない読者なら、これで満足するはず。しかし従来からの森ミステリィ・ファンは、このレベルでは喜べないのだ。待望のS&Mシリーズ再開なのか、まったくの新シリーズ開始なのかが、これでは曖昧だし・・・。シリーズものは、キャラで読ませるのは常套手段であり、たとえマンネリだ、ワンパターンだ、と言われてもコアなファンは読み続けるしかないはず。工学部助教授という稀有な経歴で、しかも多作という稀な才能を持っている森博嗣という人気作家には、多大なる期待を持っているのだから。