またまた、『ひきこもり探偵』を読んでしまった。どうもクセになるシリーズなのだ。著者デビュー作の「青空の卵」は、ミステリィとして傑作というわけではないのだが、ひきこもり青年とその親友との友情物語という異色のミステリィ。その続きを何となく読みたくなる、あとを引くお話だった。そこでこのシリーズ2作目なのだが、少しずつ鳥井と坂木の二人の過去が明かされ、次第にこの関係にも変化の兆しが出てくるのだ。
坂木が会社の同僚の女性の様子がおかしいと相談されたが、鳥井が風邪をこじらせているので、しかたなく坂木が解答をする、「野生のチェシャ・キャット」。地下鉄の駅で見かけた不可思議な行為をする少年の真の目的を探る、「銀河鉄道を待ちながら」。心当たりが無いのに、坂木が見知らぬ人から意地悪を受けてしまう話「カキの中のサンタクロース」。の、日常の謎3編。
通常のシリーズものでは、主人公の出生にまつわる謎や、実らぬ恋の行方やらでお話を引っ張ってゆくものだが、この作品では何と「青年二人の友情の行き着く先」で続けようとしている。フツーならドーデモいいようなベタベタした男二人の友情話なのだが、意外とこれが心を揺さぶってくれるのだ。この二人はホモかと思われるくらい、多少気持ちが悪い程の相互信頼関係にあるのだが、ま~これがベースになってお話が進展する構成なのだ。
それにしても、鳥井は外出しないひきこもりの割には、社会人である坂木よりも複雑な人間関係やら人情の機微を熟知しているもんだ。ま~そ~でないと、日常の謎を解けはしないのだが、それにしても夫婦の関係や子供の考え方などは、経験がものを言う世界のはずで、ネットの世界だけに住んでいては理解できないと思うのだが。そこはあまり気にしてはいけないところなのだろう。何はともあれ、謎も推理もキチンとあり、かつナイーブな青年の心温まる成長物語なのである。