いや~~実に面白かったのだ!文句なしの★5つ。青春コメディの怪作なのである。森見のデビュー作「太陽の塔」も面白かったが、こちらもやはりバカバカしいくらいの硬派な文体を駆使し、傑作コメディに仕立てている。
設定は前作とほぼ同じで、京都の四畳半一間のオンボロアパートに住む、冴えないキャンパスライフを過す大学生が主人公。前作もそうだが、この道具立ては70年代初頭にあった松本零士の奇怪な漫画「男おいどん」を何となく思い出してしまった。四畳半とビンボーだけが共通点であまり関連性はないのだが、作者の体験がベースなのであろう、両作品とも生活描写がリアルなのだ。
お話は、大学に入学したらバラ色の生活を夢見ていた主人公が、程遠い現実に夢破れ、暗く悶々とした生活をおくっていた。悪事が趣味の悪友・小津に振り回され、仙人のような先輩の世話を強いられ、黒髪の乙女にはなかなか近づけない。どれもこれも、初々しい新入生時代、最初に選んだサークルを間違えたからだ、というわけで、さ迷いこんだ4つのパラレルワールド。しかしどの並行世界に居たとしても、結果は・・・。
いや~この小説全体の仕掛けが面白い。それほど画期的なアイデアという訳でもないのだが、意外にも同様なアイデアの話を読んだ覚えが無い。最後のオチがこれか!というバカバカしさも納得感があり、最後まで楽しめたのだ。それにしても、この森見の古風な文体、駄洒落満載の修辞センスが大のお気に入りなのだ。『人の恋路を邪魔するものは馬に蹴られて死んでしまう運命にあるというので、私は大学の寥々たる北の果てにある馬術部の馬場には近づかないことにしていた』全編この調子の文章が続くのだ。格調高い表現と自虐的ギャグの落差がとにかく魅力なのだ。個性的キャラも数多く登場し、単なるお気楽なコメディなどではなく、理知的でかつほのぼのさせてくれる、素敵なお話なのだ。絶対のお薦め作品。