最近、幻冬舎がこの矢口敦子の作品を文庫化してから、人気が出てきたようだ。立て続けに一連の作品を出版することで静かなブームになっている。この「償い」は、そんな矢口ブームの火付け役のようで、我輩も今頃になって初めて気がついた作家なのだ。
かつてのエリート医師・日高は、子供の病死と妻の自殺で絶望し、ホームレスに転落した。流れ着いた東京のベッド・タウンで、高齢者、障害者など社会的弱者ばかりが殺される連続ナイフ殺人事件が起き、日高は知り合った刑事の依頼で「探偵」となる。やがて彼は、かつて誘拐犯から命を救った15歳の少年・真人が犯人ではないかと疑い始める。唯一心の支えだった子供が、殺人鬼になったのか―日高は悩み、真相を探るうち、真人の心の中に深い闇があることに気がつく。果たして犯人は真人なのか・・・。
ホームレス問題に少年犯罪、社会派と言っても良いほどの問題意識に溢れたミステリーである。しかもホームレス探偵というユニークな仕掛けで、最後まで良質のミステリーとして一気に読ませてしまう。後味の良い読後感まで付いてくる非常に良心的なミステリーであった。