ひきこもり探偵シリーズの完結編である。『青空の卵』『子羊の巣』と続いたシリーズも、これが最初で最後の長編なのである。
坂木と鳥井のコンビのもとに二人の老人が訪ねてきた。ボランティアとして働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているのだという。野良猫の姿に心を痛めている、同じボランティアの女性のための依頼だったのだ。さっそく動物園で鳥井が掴んだ真実は、自分自身がひきこもりの原因となった出来事に繋がる事実だった・・・。
長編なのだが、ミステリィらしく全編を引っ張る謎らしい謎があるわけではない。ひたすら鳥井の、ひきこもりに至った過去とその解決に立ち向かう姿と、坂木の心情の揺れがお話のメインになっている。登場人物はいつものように善意の塊のような人ばかりだし、やたらみんなすぐ泣くし、ある意味かなりユニークな小説である。前2作を読んでいないとまず読めないような本なのだが、おそらくその2作を読んだ人なら、この完結編を読むしかないはず。ミステリィとしてストーリーがどうのこうのとか、謎解きがほとんど無いとかいうレベルの話ではなく、結局最後に鳥井のひきこもりは治るのか、そしてその時坂木との関係はどうなるのか、という興味だけで最後まで引っ張ってしまうお話なのであった。
文庫のおまけとして、最後に作中に出てきた料理のレシピや全国銘菓のお取り寄せリストまで、なぜか付いている。ま~それにしても、作中で鳥井が作る料理は実に旨そうなのが印象的であった。