文句なしの傑作ミステリィなのである。さすが『第9回大藪春彦賞受賞作』である。ま~『大藪晴彦』という名前からだと、ハードボイルドかと思うかもしれないが、そうではなくて気宇壮大な構想で描かれたミステリィなのである。
26年前に発生した、未解決の残忍な連続殺人事件。唯一残された物証である体毛を、当時はできなかったDNA鑑定にかけると、とんでもない事実が判明した。当時、事件を追っていた通信記者・道平は、事件を捜査していた鑑識・大貫の依頼で再び事件を調べ始める。事件前に起こっていた米軍の事故、消された証拠、心を通わせた盲目の女の失踪・・・。道平は、過去の記憶と現在を行き来しながら、次第に真相に近づいていくのだが・・・。
緊迫感のあるプロローグ、片田舎で残虐な事件、地道な捜査から始まり、米軍の関与、ベトナム戦争の影から9.11まで、読み進めるほどドンドン広がってくるスケール感。魅力的な登場人物。予想を見事に裏切ってくれるストーリー展開に、ラストの衝撃。最後の最後まで楽しませてくれ、しかも知的好奇心まで満足させてくれる、久々のエンターテーメントの傑作であった。