『ビッグプロジェクト-その成功と失敗の研究』この新書は、奈良の大仏から核融合プロジェクトまで、古代から現代に至る歴史に残るビッグプロジェクトを取り上げ、その成功の共通要因を探った物語である。コンコルドやチャレンジャー、もんじゅなど失敗事例も解析し、やはりその共通の要素を示すことで、科学技術が如何に世界を変え、どうすれば大プロジェクトが成功することができるかを示した、なかなかの良書なのである。
時代が欲した一大インフラ整備事業として取り上げたのが、明治時代に完成した『琵琶湖疏水』と、戦後復興の代名詞である『黒四ダム』。祈りと美の構築例として、日本初の大プロジェクトである『奈良の大仏』に、世界遺産の『姫路城』。戦争が推進力となった例としては、原爆開発の『マンハッタン計画』と、人類にとって偉大な一歩である『アポロ計画』。交通システムの大成功例『東海道新幹線』と、失敗例の『コンコルド』。巨大エネルギー源としては、欧州と日本の『核融合プロジェクト』。物質の根源を探る大プロジェクトでは、成功例としてEUの加速器『JET』、日本唯一のビッグサイエンスである核融合実験『LHD計画』。失敗例が米国の超大型加速器『SSC』。プロジェクトが一人歩きした結果の悲劇として、『チャレンジャー』と『もんじゅ』の事故。これらの事例を本書では取り上げている。
著者の結論としては、大事業成功の必須条件を3つあげている。①時代の要請が強いこと ②リーダーに高い志と気概があること ③ものづくりの技術陣のレベルが高いこと。これを「魅力」「迫力」「実力」の三条件と、筆者は名づけているのだ。確かにその通りなのであろう。ビッグプロジェクトなのだから、多数の人が動かなければならない。当然、関係者全員の想いがひとつにまとまらなければ、成功はおぼつかない。このみんなの想いをまとめるための必須要素が、「魅力」「迫力」であり、実現手段が「実力」なのだろう。
この本は読み物であり、プロジェクトマネージメントの専門書ではないので、具体的なプロジェクト構築法が書かれているわけではない。しかし次世代の巨大プロジェクトを構築しようとする人々には、過去を学ぶための参考例以上の、希望をも持たせてくれるのではないだろうか。