ハードボイルドなのだ。しかし、孤独な探偵が謎の依頼を受け、初めボコボコにやられてから最後にクールに解決する、というワンパターンなお話などではない。最初から、主人公・能見は車椅子に頼るしかない障害者として登場。経歴はまったくの謎で、しかも能見が行動するたびに、周りの刑事・公安・昔の仲間たちが不安にかられて騒ぎ出すのだ。この能見とはいったい何者で、どんな目的を胸に潜めているのか?なぜ足の自由を奪われたのか?という興味で読者を引っ張っていく。
かなり複雑な構成で、のっけから登場人物が多いために取っ掛かりは読みづらい。しかしクールなハードボイルドと思わせて、意外にも不幸な家族との係わりや、姪や甥にかける無償の愛情なども絡ませていくため、なかなかの深い人物描写となっていく。ラストの死闘はお決まりだが、マッチョな探偵ではなく車椅子の能見が、どうやって壮絶な戦いを潜り抜けるのかが興味の中心。ラスとになると一気呵成に読ませるスピーディーな展開に、想像以上の暴力と破壊を繰り広げる描写には、いささか驚いた。ハードボイルドがお好きな諸兄方にお薦めの一品なのである。