ただいま絶好調「東野圭吾」が、デビュー後10年経ってもなかなか売れなかった時代、1994年の作品。
日本を代表する天才ジャンパーが毒殺された。警察の捜査が難航する中で、峰岸コーチを密告する手紙が届く。逮捕された峰岸は、留置場の中で密告者が誰か推理を始めたのだが・・・。
事件の犯人をすぐにバラしているので倒叙ミステリーかと思いきや、犯行の動機がまったく不明で、しかも密告者探しもあるので、最後の最後まで謎が続くことになる。ただ、とんでもないトリックがあるわけではないので、ミステリーとしてはフツーレベル。しかし、この小説の最大の特色は、ジャンプ競技というマイナーなウインタースポーツにスポットをあて、世界の頂点を極めるアスリート達の過酷な状況と、勝つためには何でもしてしまうスポーツ界に対する問いかけの方にある。スポーツ科学の発展により、トップアスリート達はサイボーグのようになり、勝つためなら人間性なんかは無くてもよいのか、というメッセージが重い。
凝った構成、予想を裏切るプロット、ジャンプ競技に関する薀蓄とトップスポーツに関する慧眼。どれも水準以上の出来具合なのだが、ミステリー感が足りない分お薦め度は多少低かったのだ。