『第59回日本推理作家協会受賞作』なのである。いかにも恩田陸らしく、巻頭詩、真犯人は誰かという謎、引き込まれるミステリアスな雰囲気、各章で異なる何人もの語り手。さすが、というか恩田陸ワールド全開なのである。
かつて、ある地方の名家で起きた大量殺人事件。犯人は逮捕されたのだが、数十年経ち、関係者のインタビューから次第に浮かび上がってくる真実。いったい真実を語っているのは誰で、いったい誰が真犯人なのか・・・。
やはり恩田陸の魅力は、巻頭から醸し出される妖しい雰囲気と、最後まで続くミステリアスな謎にあると思う。そして、この2点が無かったらミステリーとしては認めないのが我輩の持論なのである。昨今は、徹底したロジックで犯人を突き止めたり、謎らしい謎も無く、ラストの大ドンデン返しで読者を欺くという、トリッキーな作品が目に付く。ま~これも近年のミステリーブームのおかげで、大量のミステリーが粗製乱造され、生半可なトリックやワンパターンのストーリーでは読者を満足させられなくなったためでもあるのだが。それにしてもだ、ミステリアスな要素も無いトリック小説を、ミステリーと言って欲しくはない。例えラストに意外な結末があったとしても、謎が最初の段階で提示されなかったり、妖しい雰囲気がまったく無かったりしたら我輩の評価は低い。これはもう純粋に好みの問題であって、作品の世間一般的評価とは異なってるとは思うが。しかしこの点においては、我輩の価値観においては、恩田陸の「ミステリー」は総じてミステリーらしいミステリーばかりなのだ。
この作品もというか、この作品は特に構成が凝っており、いわばマニア向けのミステリーとなっている。数十年前に発生した事件の関係者にインタビューする形式なので、各章で語り手が異なり、しかも真実がどこにあるのかが結局最後まで明かされままなのだ。まあ暗示してはいるのだが、明示はしない。このあたりが、人によって評価が分かれるところか。