いわゆるビンボー大学生の青春記なのだ。この手の話は、酒飲みの馬鹿話として昔から巷によくあるのだが、ま~そんな与太話を日記みたいに綴ったお話なのだ。「酒飲み書店員推薦 最多得票獲得」というオビには、納得。
三畳一間、家賃月1万2千円。早稲田大学正門近くの路地裏にある、ぼろアパートに「私」は入居していた。そこにはケッタイ極まる住人たちの巣窟だった。大家のおばあちゃんや住人や翻弄される一方、「私」は探検部の仲間達と、幻覚植物の人体実験をしたり、三味線屋台でひと儲けを企んだり、能天気な日々を11年間も過ごしていたのだった。
ビンボー学生の下宿暮らしの話なのだが、似たような話だと、森見登美彦『四畳半神話大系』という傑作がある。ま~これはほとんどファンタジーなのだが、『ワセダ』の方は、実体験のところがすごい。主人公は現実から目を背け、ひたすら夢を追いかけ面白おかしく過したいという完璧なモラトリアム人間。しかし行動力が並外れているので、世知辛い世の中でも生き抜いていけたのだろう。人は所詮生き物なので、やはりゴキブリ並に生命力が強いものが最後に生き残るものだ。
しかし我輩が大学時代には、このような下宿やアパートがまだまだ残っていたが、今はどうなんだろう。ボロアパートの大半は、あの狂乱のバブル時代にかなり一掃されたはずだし、今時のスマートな学生が住むとも思えないし。もっとも、若い森見の作品は実体験がベースにあるはずなので、未だにボロアパートに生息するビンボー学生もしぶとく生き残っていることだろう。