2005年のミステリー賞を総なめにし、2006年の直木賞を受賞したほど有名なミステリィ。一時は書店の店頭でも山積み状態だった程だ。巷の書評でも好評で、恋愛小説のごとくそれこそ飛ぶように売れまくった、映画にもなったガリレオシリーズ初の長篇なのだ。
天才数学者でありながら、さえない高校教師に甘んじる石神は、一人娘と暮らす隣人の靖子に秘かな想いを寄せていた。彼女たちが前夫を殺害したことを知った彼は、二人を救うため完全犯罪を企てる。だが皮肉にも、石神のかつての親友である物理学者のガリレオこと湯川が、その謎に挑むことになってしまった。愛した女を守るため完全犯罪を目論む石神に対して、湯川は果たして真実に迫れるか・・・。
これだけ話題になった直木賞作品も少ないが、大騒ぎするほどの傑作という感想は、我輩は持てなかった。トリックそのものはかなり独創的で、そこは良いのだが、如何せん小説全体にミステリィ感が漂っていないのが不満だ。ま~トリックそのものに、途中で気がついてしまったのが最大の敗因なのだが。
我輩の趣味と合わない理由だが、やはりミステリィならミステリィらしい雰囲気が必須だと我輩は思うのだ。ここはそれこそ趣味の問題であることは分かっているのだが、ミステリィが日常の延長線上にあってはいけないと思う。もちろん殺人事件や探偵という職業が日常にあるわけではないが、そういうことではなく、「謎」が中心にいて欲しいだけだ。最近のミステリィで、最後のドンデン返しだけで勝負しようとする小説がよくあり、そこにたどり着くまでの話がつまらないものがある。この『容疑者Xの献身』は、ストーリーそのものがつまらないわけではないのだが、結局どこが謎なのかがはっきりしないのだ。もちろん純愛小説だったというオチにしたく話を進めているのは分かるのだが、探偵が謎を解かなければ謎そのものに読者が気が付かないお話の構造が、問題なのだろう。そこのところが我輩の趣味と異なっているのだ。
だから、本屋の店頭にいつも山積みになっているこの東野圭吾だが、どうしても我輩としてはなかなか手が出ない作家の一人なのだ。これも最初に好きになったミステリィ作家が、エラリー・クイーンではなくディクスン・カーだったトラウマなのだろうか。