初めての読む作家だった。まだ若い女性で、メフィスト賞受賞作がデビュー作なのだそうだ。なので、読む前は漠然と桜庭一樹のようなイメージがあり、ミステリーかホラー系かと思っていた。しかし、読んでみてビックリ。意外にも“少し不思議”な青春ものであった。
藤子・F・不二雄をこよなく愛する、有名カメラマンの父が失踪してから五年。高校生の理帆子は、残された病気の母の面倒を見ながら、瓦解しそうな家族をたったひとりで支えてきた。そこに思い掛けず現れた一人の青年。彼の優しさが孤独だった理帆子の心を少しずつ癒していく。しかし元カレの出現によって事態は思わぬ方向へ進んでしまう…。
我輩は結構青春学園ものが好きで、古くはサリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』、70年アンポ時代の庄治薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』から、最近なら白岩玄『野ブタ。をプロデュース』、森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』とか、かなり読んできたつもり。女流作家(死語になってしまったな~)なら、あさのあつこ『ガールズブルー』や綿矢りさ『蹴りたい背中』、恩田陸『夜のピクニック』あたりか、・・・。
しかしだ、この辻村深月はどれともちがう。独特の鋭い感性に妖しい魅力があるのだ。どこがちがうのだろう。女子高生の生の感覚?いや、それなら桜庭一樹も同じだし、あさのあつこでも書けるのだ。しかし、このドラマの理帆子は、常にどこか冷めた感覚の持ち主で、読者の思い入れを拒んでいる。そう、『野ぶた。』の主人公のように。それでも、強靭さではなく、どこかガラスのような脆さをかかえた理帆子は、いつもドラえもんの道具を心の糧に、生き抜いているのだ。「SF」を「少し不思議」と読む不思議な感性。不安でミステリアスな雰囲気から、最後は一気に畳み掛ける展開で、ショックと感動を与えてくれるラストシーン。ボリュームはあるが、長さを感じさせない素晴らしい長編なのだ。