伝統ある長編ミステリの公募新人賞「横溝正史ミステリ大賞」の、第21回受賞作なのだ。
ゲーム制作会社の女性社員・汐路は、同僚の転落死を目撃したためショックを受ける。故郷の田舎では中学生の射殺事件が起き、その関連性に気づいた汐路は帰郷して踏査を始めるが、そこで待ち受けたものは・・・。
最も現代的とも言えるゲーム業界の、ソフト開発現場におけるリアルな描写で物語は始まる。しかしその先端的な職場で起きた事件は、一転して田舎の因習に囚われた、おどろおどろしい雰囲気に移る。このギャップがなかなか新鮮で面白い。インターネット世代の持つ圧倒的情報量と、正当派「横溝賞」のテイストを、キチンと両立させた稀有な作品なのだ。
このソフト開発現場の様子がやたらリアルなのは、作者がゲーム会社に勤務しているからなのだが、にしても上手い。この部分だけ膨らませても長編になるぐらいのアイデアが詰まっている。後半部分の田舎での、「歪み」を核にしたアイデアは秀抜だが、あまりに血生臭いのが玉に瑕。いくら横溝ばりだとしても、やたら人が死ぬのは、我が輩の趣味ではないのだが。
とにかく、現代感覚を持ちながら、良い意味でも悪い意味でも「横溝正史」を甦らせた力量は大したものである。ミステリィ好きにお勧めの一品なのである。